白かえる通信Ⅱ=きて みて はっけん 上高地線=

信州の城下町松本から 山の玄関口新島々へ〜アルピコ交通上高地線の話題をお送りします。

カテゴリ: 2021年上高地線開業100周年!

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アルピコグループの祖業に当たる「筑摩鐵道」の創立から今年で101年。上高地線では電車2編成に「100+1」周年を記念したヘッドマークを掲出しています。この内、なぎさTRAIN専用のヘッドマークが7月下旬より新しいデザインのものに変更されました。新デザインは夏らしいひまわりをあしらったものです。
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ヘッドマークの変更は、春の桜、初夏のあじさいに続き3度目。「100+1」周年記念事業は来年3月まで継続する予定ですが、今後も季節毎に異なるデザインのものが掲出されるのではないでしょうか。前回のあじさいが正味3週間ほどの掲出でしたので見掛けたら要チェックですよ!

今回のデザインを再現したミニヘッドマークも販売されています。販売箇所は上高地線の新島々・波田・新村駅の各窓口のほか、8月15日までは「おウチで鉄道博2021」の特設WEBサイトで通信販売も行っています。この機会に是非どうぞ!

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アルピコ交通(アルピコグループ)の創立101周年を記念した「100+1周年」企画。上高地線を走る「なぎさTRAIN」(モハ3005+クハ3006)にも、筑摩鐵道の創立日に当たる3月25日より専用のヘッドマークが取り付けられました。(10列車 大庭-信濃荒井 2021/4.1)
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「なぎさTRAIN」用のヘッドマークは、春をイメージした上高地線イメージキャラクター「渕東なぎさ」さんのイラストと、「100+1周年」のロゴマーク及び、キャッチフレーズである「その先の一歩を。」の組み合わせです。第1064回でご紹介したヘッドマークと共に特別な101年目をPRします。

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「なぎさTRAIN」については、車番プレートも「100+1周年」を記念した特別仕様のものに交換されました。3005号車・3006号者それぞれの運転台後方に異なるデザインのものが取り付けられています。なおこの車番プレートは、4月3日より記念グッズとして新島々・波田・新村の各駅でも販売されています。
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この他「100+1周年」関連のものとして、電車車内や駅構内でのポスター掲出も始まりました。なお、上高地線は1921年10月2日に松本-新村間(6.2km)で営業運転を開始しており、今年が開業100周年の年に当たります。(大事なことなので何度でも繰り返しお伝えします。)


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そして時代は令和へ
2019年5月1日より新元号「令和」が施行されました。上高地線では電車にヘッドマークを掲出し新しい時代の到来を印象づけました。写真のモハ3003+クハ3004編成はかつて上高地線で活躍した10型電車のカラーリングを再現したもので、2017(平成29)年の信州ディスティネーションキャンペーンに合わせ運行を開始したものです。
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コロナ禍のもとで
2011(平成23)年より始まった上高地線の施設更新事業は、2020年(令和2)年が最終年度となる計画でした。この最終年度に予定されていたのが、現行の3000形電車に替わる「新型車両」の導入です。ところが、この年の春から本格化した新型コロナウイルス(COVID-19)の流行と、それに伴う緊急事態宣言の発出により、アルピコ交通は高速路線・上高地をはじめとする観光路線バスの運休を余儀なくされました。また上高地線の利用客数も平年比の5割(※2019年5月期/2020年5月期の比較)まで減少。新型車両の導入は見送りとなりました。現在進行中の事案ではありますが、弊通信では「希望」を持ってこれを注視して参りたいと思います。
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1920年の筑摩鐵道創立前夜から2021年の開業100周年まで、ざっと100年に渡る”山ゆき電車”上高地線の歩みを振り返って参りました。今や日本有数の山岳景勝地として知られる上高地の姿を見れば、先人たちが100年前に抱いた「上高地を世の中に開放する」夢は結実したといえるでしょう。一方で、人口減少、少子高齢化、コロナ禍を経たライフスタイルの変化と、地域鉄道をめぐる環境は決して楽観視できるものではないこともまた事実です。
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上高地線については、関係各所の努力もあって、ここ10年は利用者数が増加傾向にあり、また沿線人口も今後暫くの間は増加することが見込まれています。公設民営化などの議論も始まっていますが、上高地線=今ある地域の資源を活かしながら、地域の未来をどのように描いてゆくか。一連の記事がそのヒントや考えるきっかけとなれば幸いです。

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2021年3月25日から始まった「100+1周年」記念事業の一環として、上高地線の「渕東」「渚」「西松本」の各駅で使われている駅名板のデザインがリニューアルされました。各駅の駅名板には上高地線のイメージキャラクターである「渕東なぎさ」さんが起用されています。
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渕東なぎささんを起用した駅名板の掲出は、2012年9月に渚駅で始まり、その後、渕東(2014年3月)、西松本(2014年8月)、新島々(2020年12月)の各駅に広がりました。名前の由来ともなった渚駅はデフォルメされたイラストに「なぎさ」の三文字が添えられています。これなら一目で「そうか!なぎさちゃんか!」と覚えて貰えそうです。
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西松本駅の駅名板には、民芸品「松本手まり」と松本市の花「ドウダンツツジ」が描かれています。なお、アルピコ交通では2019年に制服が一新されており、今回のデザイン変更もそれを反映したものとなっています。「なぎさTRAIN」と共に多くの方の目を引く存在であり、これからも上高地線のPRに一役買うこと間違いなし!ですね。

2007(平成19)年も暮れに押し迫った頃『アルピコ再生支援』の見出しが信濃毎日新聞の1面に大きく掲載され、地域に衝撃を与えました。債務超過はグループ全体で182億円。事実上の倒産状態でした。当時、グループ全体の従業員数は6000人余り。運輸、小売、観光サービスなど、県民生活に関わる事業を多く抱えていたこともあり、金融機関の支援を受け翌2008(平成20)年よりてグループの再生が図られることになりました。

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当時、利用者が減少傾向にあった上高地線については、2008(平成20)年3月に、老朽化した施設の更新に多額の費用が必要として「単独での事業継続は困難」との見方が示され、存続問題が浮上します。

ここで、この当時の我が国の鉄道をめぐる状況として、2000(平成12)年の鉄道事業法改正について触れておきましょう。この改正の大きなポイントは、鉄道事業の廃止手続きが簡略化されたことでした。(従来は監督官庁の許可が必要であったものを届出制に変更)結果、全国各地で不採算路線の廃止が相次ぎ、2008(平成20)年までの8年間に全国で25路線、距離にして574.1kmの路線が姿を消しました。

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余談ですが、筆者が上高地線に通い始めるのはちょうどこの頃。当時、新村車両所に留置されていた5000形電車を拠点とする有志の会「古い電車で新しい語らいの会」への参加がきっかけでした。同会は引退した5000形電車を「まちの縁側」として地域コミュニティの場として活用することを目的に、松本大学・松本電気鉄道・新村地区住民が中心となって発足したものです。
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2010(平成22)年、松本電気鉄道は創立90周年を迎えます。この年の4月、沿線の東筑摩郡波田町が松本市と合併。上高地線は全線が松本市を走る路線となりました。それから半年後の11月、同市は上高地線の施設更新に対する支援を表明。2011(平成23)年から、老朽化した施設の更新が進められることになります。この年の4月にはアルピコグループの運輸事業を再編したアルピコ交通株式会社が発足。上高地線の正式名称も「アルピコ交通上高地線」となります。(※1)

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企業としての再生を目指す中で、上高地線でもこれまでなかったような取り組みが増え始めます。写真は2010年の冬から運行が始まった「ワイン列車」の様子。電車の車内でワインとお弁当を楽しむ企画です。観光のお客様が減る冬の期間に、普段は上高地線電車を利用する機会が少ないお客様へのPRも兼ねて企画されました。こうしたイベント列車の企画とともに、割引率の高い12ヶ月通学定期券や1日フリー乗車券の発売など、事業者としての需要の掘り起こし策も展開されました。

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2012(平成24)年3月には、施設更新事業の一環として新村駅の新しい駅舎が竣工し、同月24日より供用を開始しました。新駅舎には水洗トイレが設けられ、冷暖房も完備。利用者・事業者のサービス環境が向上しました。同駅は、2009年(平成21年)より運行がはじまった松本市西部地域コミュニティバスの発着点ともなっており、地域の公共共通の結節点としての役割を果たすこととなりました。
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渚駅にある「渕東なぎさ」さんの駅名板

2010年代の上高地線を語る上で外せないのが、上高地線イメージキャラクター「渕東なぎさ」さんの存在です。初登場は2012年3月。上高地線の運転士さんが発案し、デザインも社員の方が手掛けたオリジナルキャラクターです。同月20日に開催された「上高地線ふるさと鉄道まつり」が”初仕事”でした。それまで堅いイメージがあった会社からアニメ風のキャラクターが登場したとあって話題となり、関連グッズの販売もスタート。翌2013(平成25)年3月からは彼女のイラストを車体にあしらった『なぎさTRAIN』が運行を開始し注目を集めました。登場から9年経った現在も上高地線のイメージリーダーとして同線を発信しています。
 

こうした官民の様々な取り組みもあって、上高地線の利用者は増加。過去最低を記録した2006年度の131万人から、2019度には170万人台へと回復しています。


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