白かえる通信Ⅱ=きて みて はっけん 上高地線=

信州の城下町松本から 山の玄関口新島々へ〜アルピコ交通上高地線の話題をお送りします。

2021年03月

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2021年3月25日から始まった「100+1周年」記念事業の一環として、上高地線の「渕東」「渚」「西松本」の各駅で使われている駅名板のデザインがリニューアルされました。各駅の駅名板には上高地線のイメージキャラクターである「渕東なぎさ」さんが起用されています。
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渕東なぎささんを起用した駅名板の掲出は、2012年9月に渚駅で始まり、その後、渕東(2014年3月)、西松本(2014年8月)、新島々(2020年12月)の各駅に広がりました。名前の由来ともなった渚駅はデフォルメされたイラストに「なぎさ」の三文字が添えられています。これなら一目で「そうか!なぎさちゃんか!」と覚えて貰えそうです。
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西松本駅の駅名板には、民芸品「松本手まり」と松本市の花「ドウダンツツジ」が描かれています。なお、アルピコ交通では2019年に制服が一新されており、今回のデザイン変更もそれを反映したものとなっています。「なぎさTRAIN」と共に多くの方の目を引く存在であり、これからも上高地線のPRに一役買うこと間違いなし!ですね。

2007(平成19)年も暮れに押し迫った頃『アルピコ再生支援』の見出しが信濃毎日新聞の1面に大きく掲載され、地域に衝撃を与えました。債務超過はグループ全体で182億円。事実上の倒産状態でした。当時、グループ全体の従業員数は6000人余り。運輸、小売、観光サービスなど、県民生活に関わる事業を多く抱えていたこともあり、金融機関の支援を受け翌2008(平成20)年よりてグループの再生が図られることになりました。

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当時、利用者が減少傾向にあった上高地線については、2008(平成20)年3月に、老朽化した施設の更新に多額の費用が必要として「単独での事業継続は困難」との見方が示され、存続問題が浮上します。

ここで、この当時の我が国の鉄道をめぐる状況として、2000(平成12)年の鉄道事業法改正について触れておきましょう。この改正の大きなポイントは、鉄道事業の廃止手続きが簡略化されたことでした。(従来は監督官庁の許可が必要であったものを届出制に変更)結果、全国各地で不採算路線の廃止が相次ぎ、2008(平成20)年までの8年間に全国で25路線、距離にして574.1kmの路線が姿を消しました。

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余談ですが、筆者が上高地線に通い始めるのはちょうどこの頃。当時、新村車両所に留置されていた5000形電車を拠点とする有志の会「古い電車で新しい語らいの会」への参加がきっかけでした。同会は引退した5000形電車を「まちの縁側」として地域コミュニティの場として活用することを目的に、松本大学・松本電気鉄道・新村地区住民が中心となって発足したものです。
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2010(平成22)年、松本電気鉄道は創立90周年を迎えます。この年の4月、沿線の東筑摩郡波田町が松本市と合併。上高地線は全線が松本市を走る路線となりました。それから半年後の11月、同市は上高地線の施設更新に対する支援を表明。2011(平成23)年から、老朽化した施設の更新が進められることになります。この年の4月にはアルピコグループの運輸事業を再編したアルピコ交通株式会社が発足。上高地線の正式名称も「アルピコ交通上高地線」となります。(※1)

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企業としての再生を目指す中で、上高地線でもこれまでなかったような取り組みが増え始めます。写真は2010年の冬から運行が始まった「ワイン列車」の様子。電車の車内でワインとお弁当を楽しむ企画です。観光のお客様が減る冬の期間に、普段は上高地線電車を利用する機会が少ないお客様へのPRも兼ねて企画されました。こうしたイベント列車の企画とともに、割引率の高い12ヶ月通学定期券や1日フリー乗車券の発売など、事業者としての需要の掘り起こし策も展開されました。

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2012(平成24)年3月には、施設更新事業の一環として新村駅の新しい駅舎が竣工し、同月24日より供用を開始しました。新駅舎には水洗トイレが設けられ、冷暖房も完備。利用者・事業者のサービス環境が向上しました。同駅は、2009年(平成21年)より運行がはじまった松本市西部地域コミュニティバスの発着点ともなっており、地域の公共共通の結節点としての役割を果たすこととなりました。
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渚駅にある「渕東なぎさ」さんの駅名板

2010年代の上高地線を語る上で外せないのが、上高地線イメージキャラクター「渕東なぎさ」さんの存在です。初登場は2012年3月。上高地線の運転士さんが発案し、デザインも社員の方が手掛けたオリジナルキャラクターです。同月20日に開催された「上高地線ふるさと鉄道まつり」が”初仕事”でした。それまで堅いイメージがあった会社からアニメ風のキャラクターが登場したとあって話題となり、関連グッズの販売もスタート。翌2013(平成25)年3月からは彼女のイラストを車体にあしらった『なぎさTRAIN』が運行を開始し注目を集めました。登場から9年経った現在も上高地線のイメージリーダーとして同線を発信しています。
 

こうした官民の様々な取り組みもあって、上高地線の利用者は増加。過去最低を記録した2006年度の131万人から、2019度には170万人台へと回復しています。


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アルピコ交通上高地線では、2021年3月25日よりアルピコグループの創立101周年を記念したヘッドマークを電車2編成に掲出しています。これは同社の前身であり、グループの祖業である筑摩鐵道が1920(大正9)年3月25日に創立されたことに因んだ企画です。
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記念ヘッドマークは2種類用意されており、その内モハ10形リバイバルカラー列車(モハ3003+クハ3004)には、100+1周年を記念したロゴマークと、キャッチフレーズ「その先の一歩を。」を配したシンプルなデザインのものが取り付けられました。なお、上高地線の前身に当たる筑摩鐵道島々線は会社創立の翌年、1921年10月2日より松本-新村間(6.2km)で運行を開始しており、今秋開業100周年を迎えます。
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100+1周年に合わせ、特製ののぼり旗も用意されました。(写真右側)コロナ禍の元迎えた2020年(=創立100周年)は、アルピコ交通やグループ各社にとっても大変厳しい一年となりました。創立100+1周年のキャッチコピー「その先の一歩を。」は、そうした中でも懸命に前進しようとする同社やグループの姿を現したものと思われます。繰り返しとなりますが、2021年に上高地線は開業100周年を迎えます。その先の一歩を踏み出す「山ゆき電車」上高地線に今後もご注目ください。

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時は平成。昭和末期からのバブル景気の下で、松本電気鉄道は運輸、小売、不動産、レジャー産業を担う企業群として成長を果たします。1992(平成4)年にはグループアイデンティティ(GI)を導入。松本電気鉄道を中核とするアルピコグループ(※1)が発足します。1999(平成11)年には5000形電車に代わる新型車両3000形電車がデビュー。白い車体に5色のダイナミックストライプを引き、新たな時代の到来を印象付けました。

※1「アルピコ」は「ALPINE CORPORATIONS」の略称で、日本アルプスを背景とする地域に根ざし、地域に貢献していく企業集団を意味しています。

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この時期の上高地観光をめぐる動きとして、1994(平成6)年に沢渡=上高地間のシャトルバスに環境配慮型のハイブリット車両が導入されたことや、1996(平成8)年から通年のマイカー規制がはじまったことが挙げられます。2002(平成14)年には新島々駅の駅舎を改築。山の玄関口としての趣を新たに、現在も上高地や乗鞍高原など北アルプス各地を訪れるお客様を迎えています。なお、上高地への入り込み客数のピークは1991(平成3)年度200万人といわれ、以後漸減。現在は年間120万人前後で推移しています。

《夢の『上高地登山鉄道』計画》

紀行作家として知られる宮脇俊三氏(1926-2003)が1993(平成5)年に発表した著作『夢の山岳鉄道』(JTB刊)に「上高地登山鉄道」が収められています。沢渡を起点に梓川に沿って鉄道を敷いたら...という構想は大きな反響を呼びました。実際に、1995(平成6)年には、当時の安曇村が「上高地新交通システム構想」として、トロリーバス、ロープウェイと並び登山鉄道を候補として検討することが報じられ話題となっています。先述のハイブリッドバス導入などもあり、計画は立ち消えとなりましたが、もし実現していたら...と夢が膨らみます。

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ハニフ1号、鉄道博物館へ

ハニフ1号は、明治39年の甲武鉄道(現:JR中央線)の開業時に導入されたデ963形電車をルーツとする車両です。1922(大正11)年、上高地線の前身である筑摩鐵道に譲渡され、1945(昭和20)年まで客車として使用されました。1955(昭和30)年には正式に廃車となりましたが、当時松本電気鉄道の社長を務めていた滝沢知足氏が保存を指示。以後半世紀に渡って新村車両所で保管されてきました。国電(近距離電車)の始祖的な存在として、鉄道ファンの間では知られた存在でしたが、2007(平成19)年に開館する鉄道博物館(埼玉県)への収蔵が決定。同年3月には新村車両所で盛大なセレモニーが催され、送り出されました。


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上高地線では、今季のJリーグ開幕に合わせ、地元のJ2チーム「松本山雅FC」を応援するヘッドマークを電車1編成に掲出しています。このヘッドマーク掲出は同チームのオフィシャルスポンサーをアルピコグループが務めている縁で2012年より始まったものです。
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今年はチームスローガンである「新・心・進」を配し、トゲトゲした見た目もインパクト大です。シーズン中の3月〜12月頃まで電車1編成(モハ3001+クハ3002)に掲出されます。J2降格となった一昨年に続き、2020年シーズンは22チーム中13位と厳しい状況の同チームですが今季の奮闘を願います。

 

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